製品を設計するとき、図面にはさまざまな寸法が書かれています。
しかし、実際の製造現場では、その寸法を“完全にそのまま”再現することはできません。
どれだけ精密な加工機を使っても、材料の状態や工具の摩耗、温度変化など、さまざまな要因によって必ず誤差が生まれます。

この「誤差がどこまで許されるか」を明確にしたものが 公差(こうさ) です。
図面では、寸法の横に「±1」などと書かれている、あの部分です。
今回は、この「公差」とは何なのか、設計をする上でなぜ大切なのかをお話しします。

結論
- 公差とは、ものづくりにおける余白。
- 公差設計とは許容できる誤差の範囲(公差)を決めることであり、
品質・製造性・コストのバランスをとるために行う。 - 最優先は“構造でばらつきを抑えること”。それでも無理な部分を公差で調整する。
- 公差設計は図面の最後の作業ではなく、設計全体の品質とコストを左右する重要工程。
公差とは何か
公差は、言い換えると “ものづくりにおける余白” です。
例えば、直径10mmの穴を加工するとします。
図面に「10.0mm」と書いてあっても、実際には9.98mmになったり、10.03mmになったりします。
このとき、どこまでならOKかを決めておかないと、組み立てができなかったり、性能が出なかったり、最悪の場合は製品不良につながります。
だからこそ、設計者は「どこまでの誤差なら許容できるか」を考え、公差として図面に記載する必要があります。
公差設計とは
公差設計とは、製品が問題なく機能し、かつ製造できるように、

「許容できる誤差の範囲を決めること」 です。
ここで大切なのは、公差は“ただ数字を決める作業”ではないということ。
よくありがちな例として、こんな判断をしてしまうことがあります:

類似部品の図面では±0.5だから、今回も同じくらいで良いだろう。

ここは大事な部分だから、厳しめの±0.1にしとこう。
一見、妥当なように見えますが、
このように根拠のないまま公差を決めてしまうと、思わぬ落とし穴があります。
たとえば:
類似部品の図面では、組立て後に調整を入れるため、公差を緩く設定していたかもしれません。
今回の採用した製造方法では、±0.1の精度を出すのは難しいかもしれません。
こうしたことをきちんと検討しないまま進めてしまうと、
製品の品質、コスト、製造性、組立性など、ものづくり全体に影響が出てしまいます。
公差設計の目的
公差設計の目的は、品質・製造性・コストのバランスをとることにあります。
公差を狭くすれば、確かに品質は安定します。
しかし、公差を厳しくしすぎると、そもそも採用している製造方法では実現できない場合があります。
たとえ作れたとしても、加工の難易度が上がり、コストが大きく跳ね上がることもあります。
だからこそ、公差設計では
必要な品質を確保しつつ、無理なく製造でき、コストも適切に抑えられる“ちょうどいい範囲”
を見つけることが重要です。
この「ちょうどいい公差」を見極めることこそが、公差設計の役割なのです。
ばらつきの正体と、設計者の大きな役割
若手のうちは

「ばらつきって製造の問題でしょ?」
と思いがちです。
しかし実際には、ものづくりのばらつきの多くは 設計段階で決まっています。
ばらつきを左右する主な要因は次の4つです。
- 構造(支持方法、固定方法)
- 形状(肉厚、段差、加工しやすさ)
- 材料(硬さ、熱膨張、加工性)
- サイズ(大きいほど誤差が出やすい)
これらはすべて、設計者が決める仕様です。
つまり、設計者がどんな構造・形状・材料を選ぶかによって、製造のばらつきは大きく変わります。
だからこそ、公差設計の際にまず検討すべきなのは、

構造や形状の工夫でばらつきを抑えること です。
例えば、
- 肉厚を均一にする
- 不要な段差をなくす
- 剛性の低い細長い形状を避ける
- 熱膨張の大きい材料を避ける
こうした工夫だけで、製造のばらつきは大きく改善します。
それでも抑えきれない部分について、公差で調整する。
これが正しい順番です。
公差設計は「最後の微調整」ではなく、設計の一部
公差は図面の端に小さく書かれていますが、役割はとても大きい。
公差設計は、設計の最後に“なんとなく数字を入れる作業”ではありません。
むしろ、
設計の初期段階から公差を意識することで、製品の品質とコストは大きく変わります。
- 組立性
- 耐久性
- 振動・騒音
- 製造コスト
- 品質の安定性
これらはすべて、公差の影響を受けます。
若手のうちは「公差は製造の人が決めてくれる」と思いがちですが、

本来、公差は 設計者が“意図を持って”決めるべきもの です。
公差設計は、経験や現場での学びが積み重なって形になる“ノウハウの塊”のような領域で、
設計者は少しずつ自分なりの判断基準やセオリーを育てていく必要があります。
私自身も、機械系エンジニアになりたての頃はこの分野にかなり苦戦しましたし、今でも学び続けているテーマです。
だからこそ、このシリーズでは、一般的に使われている考え方に加えて、私が実務の中で大切にしている視点も交えながら、できるだけ分かりやすくお伝えしていきたいと思います。
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