こんな疑問にお答えします!
- 機械設計って、CADをいじったり、図面書いたりするイメージだけど、他にどんなことをやっているんだろう??
- 機械系エンジニアって、実際どんなことをやっているの??
機械設計業務の流れ
機械設計業務の流れは以下の通りです。詳細は下で説明します。
- 仕様書作成
- 形状検討
- 試作(モデリング、図面作成、見積もり、発注)
- 評価(評価計画、試験系作成、評価報告)
- 製造移管(文書作成、関係部署との調整・周知)
番外編:リスクマネジメント
1.仕様書作成
まずは仕様書作成です。
仕様書とは、ざっくりいうと「どんなものが欲しいのか」を記した文書になります。
例えば、一口に「ものを吊るすためのフックが欲しい」と言っても、「工場で重量物を吊るしておくためのフック」と「家庭でコートを吊るしておくためのフック」とでは、見た目も強度も全く異なります。
「どんなものが欲しいのか」がはっきりしていないと、ゴールが分からないまま設計して迷走してしまった、作ったはいいもののユーザーが欲しいものから外れていた、ということになりかねません。
そこで、「何が欲しいのか」を明確にし、「これに合致したものを作ればよい」と設計の指針になるものが、仕様書なのです。
仕様書にも色々と種類があるのですが、詳細についてはまた別記事で説明します。
今は、まずは「仕様書」という「設計のゴール」を作成する、ということを理解してもらえればと思います。
2.形状検討
次に、形状検討です。
1.で設計した仕様書を満たすには、どのような構造・形状が良いかを検討します。
ただし、一口に形状検討といっても、
・強度満たしているか
・他部品との干渉はないか
・紫外線や薬品による劣化はないか
・製造できるか
・コストは高すぎないか
・メンテナンスはできるか
等々、様々な要因を考慮しなければなりません。
場合によっては、メーカーや他部署と綿密に打ち合わせをしながら進める必要があります。
3.試作(モデリング、図面作成、見積もり、発注)
2.で検討した形状をCADでモデリングし、図面を作成します。
メーカーに見積もりをとり、予算的に問題がないならば発注をします。
皆さんが機械設計と言われて一番思い浮かべるのは、このフェーズかと思いますが、実際には機械設計業務の一部でしかありません。
4.評価(評価計画、試験系作成、評価報告書作成)
3.で作成した試作にて、検討した形状が仕様を満たしているのかを確認します。
仕様を満たしているか確認するにはどんな内容を評価すれば良いかを考え、評価計画を立てます。
例えば、先に上げた「家庭でコートを吊るしておくためのフック」について「5kgのものが吊るすことができること」という仕様があった場合は、以下のような試験を考えます。
試験方法:石膏ボードにフックを設置し、おもりを吊るす。
試験条件:おもりの重量_7.5kg(仕様の5kgに安全率1.5をかけた値)
サンプル数:5P(製造のばらつきを考慮)
合格条件:おもりをつるしても、フックの固定にゆるみないこと
次に、実際に試験系を組み、試験を実施します。
評価した結果、合格基準(仕様)を満たしている場合は、次のフェーズに進みます。
満たしていない場合は、2.形状検討から再びやり直しになります。
また、品質管理の観点から、評価計画書・実験ノート・評価報告書を文書化が必要な場合も多いです。
5.設計移管
最後に、設計したものを、実際の工場できちんと作れるか、確認します。
例えば、設計者が図面も手順書も出さずに、試作品を工場に渡して「これは仕様を満たしているのでこれを作ってください!」と丸投げしたとします。
当然、それでは設計したものと同一のものはできず、仕様を満たした製品は出来上がらないでしょう。
具多的には、設計者が図面や組立手順・検査手順等を作成、共有します。
そして、実際に組立や検査を実施し、問題がないことを確認します。
また同様に、出荷後の装置に対して、メンテナンス員が問題なくメンテナンスを実施できるかも、確認します。
ここまでクリアすることで、初めて機械設計業務がクローズします。
番外編:リスクマネジメント
どんな製品にもリスクは発生します。
例えば、フックが折れたら、フックにかかっていたものが落下して壊れるかもしれません。
もしくは、フックの下に居た人に、落下物が当たって、ケガをするかもしれません。
そのようなリスクを予測し、最小限に食い止める活動がリスクマネジメントです。
詳細は別記事で説明しますが、例えば、リスクマネジメントのために、以下のようなことを設計者は検討しなければなりません。
リスク分析:フックの下に居た人に、落下物が当たって、ケガをする
↓
リスク評価:許容不可(使用者の怪我につながるため)
↓
対策:耐荷重の2倍以上の強度になるように設計し、評価した
↓
リスクの再評価:許容可(十分な強度があり、発生率が低いため)
これを、全てのリスクに対して行い、その内容をリスクマネジメント活動として文書化しなければならないのです。
まとめ:機械設計といっても色々ある
ここまで来れば分かると思いますが、一口に「機械設計」と言っても、様々なものがあります。
「機械設計」という言葉はあいまいで、企業によって「機械設計=形状検討」の場合や、新人には「評価」しかやらせてもらえない場合もあります。
ですので、「仕様検討から設計移管まで一連の流れをやりたい」という人が「3Dモデリングや図面作成」が主業務の部署に配属されてしまうと、「単純作業でつまらない,,,」と感じてしまうでしょう。
逆に「形状検討」だけをやりたい人が、「仕様検討から設計移管」までやる部署に入ってしまうと「もっと形状や強度を考えたいのに他の業務でできない,,,」ということになります。
「機械設計」の中でも自分がやりたい業務を明確にし、それができる場所を探すというのが、重要かもしれませんね。